交通事故で健康保険は使えるのか
1 交通事故と治療費
交通事故により負傷し、医療機関において治療をうけると治療費が発生します。
加害者側が任意保険に加入しており、被害者に過失がないかあっても小さい場合には、加害者側保険会社が直接医療機関に治療費を支払う一括対応をすることが多いため、あまり治療費は問題になりません。
しかしながら、被害者側に小さくない過失があるなどして、治療費をおさえる必要がある場合には、健康保険を使うべきメリットは大きいといえます。
2 交通事故と健康保険
交通事故による受傷の治療であったとしても、健康保険を使うことはできます。
健康保険を使用して治療を受ける場合、治療費の7割を健康保険組合等が負担することになりますが、これは、本来加害者側が支払うものであり、加害者に求償する必要があります。
このため、交通事故の治療に健康保険を使用する際には、健康保険組合等に対して、「第三者行為による傷病届」を提出し、加害者に関する情報を届け出る必要があります。
3 健康保険を使う必要がある場合
交通事故で健康保険を使う事情としては、加害者が無保険であり、一括対応がなされない場合や、被害者側にも小さくない過失があり、過失相殺に備えて治療費を抑える場合が考えられます。
加害者に損害賠償請求をする際、被害者に過失があると、過失相殺がなされますが、その場合、損害額の合計から過失割合に応じた金額を差し引くことになります。
たとえば、治療費が200万円、慰謝料が100万円、被害者の過失が3割の事故の場合には、損害額の合計300万円から3割に当たる90万円を過失相殺し、そこから治療費200万円を差し引くと、残りは10万円となります。
一方、健康保険を使用し、治療費を60万円まで抑えた場合、損害の合計額は160万円となり、3割に当たる48万円を過失相殺し、治療費60万円を差し引いても、52万円が残ります。
このように、健康保険を利用することで、治療費を抑え、過失相殺される金額を小さくすることにより、賠償額を増やすことができます。
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